経済学部の創立70周年を迎えて
「大学で学ぶ」ということについて考えてみたいと思います。私が大学に入学して40年ほどの月日が流れております。その間、学生として教員として様々なものを「学んで」きたはずなのですが、それがどういうことなのかについては、きちんと向かい合ってこなかったように思います。
私は比較的最近「タイパ」という言葉があることを知りました。タイム?パフォーマンスの略語だそうで、動画コンテンツを倍速で再生する例で説明されていました。要点として、時間を効率的に使うことだと理解しました。しかし、元ネタは経済学部では比較的なじみのある「コスパ(コスト?パフォーマンス)」であるのだそうですが、タイパという響きはコスパに比べ何か腑に落ちない余韻が残りました。
考えてみれば「時は金なり」なのですから、コスパは容易にタイパに変換できるはずです。ただ、白髪も増え頭も固くなってくると、この変換がすんなり飲み込めなくなってくるのです。そこで、タイパを少しかみ砕いて考えてみます。
動画再生の例で、コンテンツを見る目的を「鑑賞」と「情報取得」の2つに分けてみましょう。そうすると、コンテンツの鑑賞とタイパの相性の悪さは一目瞭然です。お気に入りのアーティストの新曲のミュージックビデオを倍速視聴する人はいないと思います。ですから、動画再生におけるタイパとは専ら情報取得に関わるものだということになります。
一方、倍量の情報を同じ時間で得ることができるのであれば、効率的な時間の使い方であるということも自明のように思えます。ただここで、取得する情報に時間を費やして摂り入れるだけの価値があるか問うてみてください。もし、無価値の情報というものがあるとすれば、限られた時間をその取得に使うのは、無意味どころかマイナスのパフォーマンスということになります。そのような例は極端なものであるにしても、単純に情報を圧縮すればいいということではない、ということはわかります。
当たり前の話ですが、情報には「価値」があります。そして、強調しておきたいのが「自分の知るべき情報を知る」ことの大切さです。鑑賞の価値をタイパで測ることができなかったのは、その時間が自分にとって大事なものを教えてくれるからです。
「大学で学ぶ」ということは、ただ単に知識を身につけることではありません。自分自身にとって何を知るべきかを知ることでもあるのです。
今年、北九州市立大学経済学部は創立70周年を迎えました。
この長き時間の「価値」を、私達の学部に関わる人達の「パフォーマンス」につなぐことが私の使命であると考えています。
経済学部長 田村 大樹
経済学部ロゴマーク - 学生を見つめ続けます -
60周年を記念して作られた経済学部のロゴマーク。オレンジは「活力」、黄色は「知性」、3つのKは「北九州」「経済学部?学科」「経営情報学科」の3つの意味を表します。
また、ひまわりの花言葉は「あなただけを見つめる」。学生達への惜しみない愛情と、真摯な指導姿勢の意味を込めています。
学部沿革 - 半世紀の歴史と伝統を刻む -
年暦 | 内容 |
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1953年 | 商学部設立 |
1965年 | 商学部経営学科開設 |
1966年 | 商学部経済学科開設 |
1981年 | 大学院経営学研究科開設 |
1989年 | 大学院経済学研究科開設 |
1993年 | 経済学部に改組(経済学科?経営情報学科) |
2000年 | 昼夜開講制 |
2003年 | 経済学部改革の実施(教員評価、TOEIC受験義務化等) |
2005年 | 大学が公立大学法人に移行 |
2007年 | 専門職大学院マネジメント研究科開設に助力 |
2008年 | インターンシップの単位化実施 |
2012年 | 数学、英語の入学前教育の実施 |
2013年 | 経済学部開設60周年、ロゴマークの決定 |